モノづくりの現場

バングラデシュのカフェに来ているのだけど、なぜか流れている曲はmassive attack 絶妙なタイミングで流してくれます、。

                                    • -


うちの会社の商品の生産は、自社が持つ工場と、提携先のC(名前は伏せます)という工場の2つの工場で主に生産がされています


昨日は、その提携先の工場Cに行ってきました。
大きな4階建の工場内に入ると、その中にはたっっくさんの労働者と広い生産スペースが広がっていました。


聞くところによると、現在この工場には500人近い人々が働いているらしい。
うちの自社工場は50人でやっているから、思わずその規模のでかさに圧倒されました。


工場Cのマネージャーに生産プロセスの説明をしてもらいながらフロアを、ぐるっと一周したのだけど


なんかこの工場って人数は多くてバングラの中でも2番目にでかい工場で圧倒はされるのだけど、自社工場から感じられるような、工員達の活気や、やる気、意欲みたいなものを一切感じないんですよ。めちゃくちゃ不思議でした。


ただ人数が多くてにぎやかに見えるだけで、そこに仕事への意欲みたいなものはぜんぜんないのです。


ぼーっとしている工員やずっとおしゃべりしてる女の子がいっぱいいたし。
何でここにいるんだろう?みたいな顔している人もいっぱいいた。



うーん・・・


うちの工員たちといえば、朝は時間通りに(もしくは自主練の為に1時間前に)出勤して、出荷前のこの時期なんて朝から晩まで15時間近く働くこともあるのに、一日中てきぱきてきぱき働くんだよ。
本当に仕事への勢いとプライドがすごいよ、私もミスすれば彼らから怒られるし、彼らのプロ意識には圧倒されます。
とにかく働いている表情が全然違うんだ。


何でこんなにうちの工員達と雰囲気が違うんだろう??と思ったけど
話を聞いているとそれもそのはずだよなぁと思った。


今この工場Cは、うちからのオーダーとイタリア人バイヤーからのオーダーの2つで経営が成り立っているんだって。


品質にめちゃくちゃ厳しく小ロットオーダーのうちと
品質にゆるく何十万個とオーダーをする大規模ロットのイタリア人バイヤー


当然工場Cとしては、品質にうるさい小ロットのうちよりは、品質なんて気にしない大規模ロットのイタリア人バイヤーのほうがビジネスとして儲かるし楽だし好都合なわけだよね。当然そっちに流れていくよ


その何十万個とオーダーをするイタリア人のバイヤーに対応する為に、最近一気に工員の人数を増やしたんだって。そのほとんどがモノづくり経験の浅い新人ばかり。


新人を一気に増やしたはいいけど、それをマネジメントサイドが全然管理も教育もできていない。


マネージャーたちは、それぞれの工員の役割どころか名前さえ把握しきれてないんだよ。
ここで働いている工員は匿名の存在 いつでも代替可能な存在になっている 


だからかよくわかないけど、
なんかかなしくなるぐらい、みんな表情がないよ。
自分の仕事へのプライドとかぜんぜん感じない。
自分がこの工場に存在する意味とか微塵も感じられないんだろうな。


雇い主から名前も覚えられないような、そんな扱いの工員たちから「良いモノ作ろう!!」という想いや、工場Cへの忠実心とか当然生まれるわけないよね。


そのせいで、この工場Cの品質はどんどん低くなっている。
うちも、もうこの工場に生産を任さる事は出来ないという判断になってきている。


Cは現在抱える500人に加え、さらに200人の新人を雇ってイタリア人バイヤーのオーダー数に答えようとしている。今でさえ、人材のマネジメントが出来ていないというのにまた人数を増やすなんて・・・・


しかも、このイタリア人バイヤーのオーダーだっていつ急に無くなるかわからないのに。
その時、この膨大な数に膨れ上がっているは工員たちの雇用はどうするのだろう。
もう完全にただの儲け主義になってしまっている。


バングラで、労働者は非常に流動的に入れ替わります。
ある工場で働いていたとしても、ほかの工場から100円でも高い賃金でスカウトが来たら平気で元の工場を離れていきます。


工場に対する愛情や雇い主への忠実心など一切ないからね。
忠実心を育てるようなマネジメントを出来る人間がいないからね。企業文化なんて存在しないし、理念や哲学が自分の身に染みわたっていないから、どこの工場で働いたって同じだよ。
それなら少しでも給料高いとこで働こうと思うのは当然で、離れるのなんて本当に簡単だよ。賃金以外のロイヤリティが本当にないんです。
流動的から知識・技術の蓄積も難しい。。。


これがほとんどの工場の現状で、バングラに限らず途上国によくありがちです。


うちの工員達からこんな言葉を聞きました。


「こんなに工員を愛してくれるマネージャーはいないよ」
「こんなにも、自分が誰の為に商品を作っているのか実感させてくれる会社はない」



その言葉を聞いて、ここは何て幸せなモノづくりの現場だろうと思ったよ
工員達の会社への忠誠心が本当に見て感じとれる工場
自分の仕事にプライドを持てる工場
会社の理念・哲学が工員の体の芯までしみわたっている工場


50人規模のうちの工場が、なぜ500人規模の工場Cよりも生産性が高いかという理由はここにあると思う。


8月から会社で働き始めて、会社の理念や哲学、文化というモノを社員に浸透させる事がいかに大切かつくづく感じているのだけど、こうも現場で違いが出るなんてね。
うちの会社の企業文化をバングラデシュで築いた社長・副社長はやっぱり本当にすごいとしか思えない。


今日本の色んな企業が途上国に工場を持ってモノづくりを行っているけど、どれだけの工場が幸せなモノづくりの現場になり得ているのだろう。

うちみたいなベンチャーでなく、大企業のSONYとかユニクロとか何千って工員を雇っている工場ってどんな感じなんだろう。


あー幸せなモノづくりの現場がもっと増えればいいのになぁ!!




*工場で出される夜食




*社宅のお手伝いさんムンナおじさん 

*コメントくれた方本当にありがとうございます
明日返します!